千里を彩る

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 まだ寝てたりして。  可能性はあるなぁ……。 《トゥルルルル、トゥルルルル》 《ピッ》 「はい?」 「あっ、蒼ちゃん? 今どこにいるの? 先生めちゃくちゃ怒ってるよぉ」  蒼ちゃんは意外にもツーコール目で電話に出ると、けだるそうに返事をした。 「今か? 今は学校にいるぞ。もうすぐ教室の前だ」  相も変わらず、悪びれた様子も無しに、あっけらかんとしているなぁ。  図太いというか何というか。 「すぐそこまで来てるそうです」 「んだとー! あのバカ!」  先生が待ちきれんとばかりにドアを開け、廊下に首だけ出してブンブン振りながら左右を確認している。 「来ねーぞ、九十九ぉ!」  先生……あたしに八つ当たりするのはやめて下さい……。 「千里は関係ないだろー! 怒鳴るなら蒼に怒鳴れよ!」  結衣があたしの前に立ち、短い手を目一杯広げて守ってくれる。 「来ないって……誰が?」 「!!!」  全員が斜め後ろの窓際を見る。  教室の窓際、最後尾を見ると、蒼ちゃんが自分の席に座っていた。 「おはよぉ」  軽く挨拶をすると、キョトンとするクラスメイト達を意に介さず、手に持っていたペットボトルのお茶に口を付ける。  少し長めのヘアースタイルも手伝って、女性とも男性とも見て取れる中性的な印象の彼。  そんな整った顔立ちとは裏腹に彼の行動はハチャメチャだ。
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