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蒼ちゃんの傍若無人ぶりに、土井先生は相当ヒートアップしているようだ。
「蒼っ! テメーいつから居た!?」
先生はプルプルと怒りに震える手で蒼ちゃんを指差しながら、隣の教室まで届かんばかりに怒鳴る。
「んっ? ずっと居たけど?」
ビー玉の様なクリッとした眼を先生に向けながら、蒼ちゃんは首を傾げた。
「うそつけっ! お前みたいなアホの存在に気付かん訳ないだろーが!」
先生は大きな体と比例する程の大きな声で彼を恫喝する。
「そういきり立つなよ、晃。血圧が上がってしまうぞ」
「このクソガキ! 一体誰のせいだと思ってんだ!」
暖簾に腕押し。
ぬかに釘。
馬の耳に念仏。
こういった諺(ことわざ)がハマるシチュエーションは蒼ちゃんの横で何度も経験してきた。
こうなってくると、この人には誰も勝てない……。
「先生! ホームルーム始めましょ! ねっ!」
ホームルームが丸々潰れてしまうと確信したあたしは、先生の気を蒼ちゃんから逸らすために手を叩きながら提案する。
「ったく! 次からは絶対に許さんからなっ!」
「どうも」
蒼ちゃんはゆっくりと足を組み変えながら、極めてテキトーな返事をした。
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