蒼の過去

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 その事件の詳細については、あたし達がまだ中学生だった頃、結衣がしぶしぶ教えてくれた。  彼女は蒼ちゃんと同じ月影学園出身で、幼少期は彼と共に過ごしてたんだ。  もしかすると、あの事件が全ての始まりだったのかもしれない。        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・        ・      【九年前】  いつもと変わらぬ月影学園。  突き抜けるような快晴だったその日、園長と子供達は学園内にある、お世辞にも広いとは言い難いグラウンドにて皆でボール遊びを楽しんでいた。  すると突然、静かな排気音を鳴らしながら園内に数台の車が入ってくる。  それは見るからに高級そうな黒塗りの車で、中からは黒服に身を包む男達が次々と降りてきた。 「着きました」  一人の男が最後に来た車に近付き、後部座席のドアを開けると白衣を着た中年の男が出てくる。  長身で面長のその男は、右手に黒い革の手袋を付けており、車から降りると探し物をしているかの様に辺りをキョロキョロと見回した。 「せんせー! 変なおっちゃん達が来たでぇ」  子供の一人が園長の袖を掴みながら不安な表情を浮かべている。  それを聞いた他の子供達も奇妙な訪問者達を警戒し、不安が広がっていった。 「大丈夫や。心配せんでもええ。先生ちょっと話聞いてくるから待っときやぁ」  子供達の頭を撫で、園長はゆっくりと黒服達のもとへと向かう。
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