蒼の過去

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 白衣の男の判断により、蒼は彼らの乗ってきた車に入れられ、研究所へと連れていかれることになる。  彼らが、この月影学園に訪れた本当の理由。  それはウイルスの検査とは名ばかりの、身寄りのない子供達をターゲットにした能力開発を目的とする拉致及び引き抜き。  彼等の組織内で隠語として使われている『指差し』といわれる拉致行為だったのだ。  彼等の手によって、研究所に連れて行かれた蒼を待ち受けていたものは、あらゆる能力を測定するテストの連続であった。  蒼達の高校の担任であり、当時の学生空手チャンピオンでもあった土井 晃と戦ったのはこの時である。  能力測定を進めていく中で、蒼は各部門のあらゆる面で高い数値を示す。  中でも群を抜いていたのが頭脳部門。  テストにより知能指数を測定した際、彼はIQ210という数値を叩き出した。  これは現存する人間の中で最も高い知能指数だ。  その結果を受けて科学者達の研究は更に加速していく。  そして……彼の最も特異な能力が徐々に明らかとなっていくのだが……。  かくして蒼は、研究所で5年もの間、監禁されることになり、出て来た時には彼の人格はほぼ崩壊していた。  しかし、帰るべき場所を求め、わずかに残った過去の記憶を頼りに、蒼は月影学園のある場所までなんとか辿り着く。  しかし……そこに月影学園は無かった。  月影学園の子供達は各々養子として引き取られ、学園は解体されたのだと、後に再会した結衣によって蒼は知ることとなる。  園長の所在は不明だとも……。  依り処を完全に失った彼の人格は完全に崩壊し、やがて暴走を始める。  しかし、そんな彼に対して、国が動いた。  高い知能指数と特殊な能力を持つことが研究所の解析より発覚した彼は『国際人民データバンク』という世界中の有国籍者を管理するデータベースに『特別待遇児』として登録されており、そのため彼は国から保護されることとなったのだ。  勿論、国としては監視という目的が強かった。  小さいながらもマンションの部屋を一つ与えられ、生活保護費も交付された。  そして、十二歳の春から都内の公立中学校へと通うこととなるのである。  そこで結衣と再会し、千里や光と出会うことになるのだが……。  良くも悪くも、その出会いが様々な人間を巻き込んで運命を大きく廻すことになっていくのである。
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