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用事って……本館に?
うぅ……気になるよぉ……。
「蒼のことですか?」
「えっ?」
光の言葉に驚いてしまい、衝いて出た言葉がドモってしまった。
「行ってきても構いませんよ。食堂は逃げませんから。」
あたしの心の声を聞いていたかのように、彼女は気を使ってくれる。
「でも……」
「行ってこいよ! 光と二人で飯食うのは不本意だけどなっ!」
光をチラ見しながら、悪態をついた結衣の目は、何故かキラキラしていた。
表情は限りなくニヤニヤに近かったけど……。
「ワタクシだってあなたと二人での昼食など御免こうむります」
言われっぱなしでは終わらないとばかりに、光は目を細めながら反論する。
「このやろぉ~! いつか絶対ギャフンと言わせてやる!」
これ程遠慮せずに言い合いをできる二人は、本当に仲がいいんだなと思い、そんなやり取りを見て思わず笑みがこぼれた。
ありがとぉ。光。結衣。
「うん! あたし行ってくるね! 埋め合わせは今度するからぁ!」
もしかしたらウザがられるかもしれないけど、蒼ちゃんが学校内で用事なんて中学時代でもそうそう無かった……珍し過ぎるもん。
「わかりました」
「後で報告よろしくぅ!」
手を振る二人を尻目に、あたしは蒼ちゃんを走って追い掛けた。
あたし達とは反対側の入口から本館へ入った蒼ちゃん。
同じ入口から入ると、すでに彼の姿は見当たらず、学生達が起こす喧騒で溢れかえっていた。
数メートル歩いて、周りの教室を見渡すが、やっぱりいない。
二階に上がったのかなぁ?
とりあえず上がってみよぉ。
きびすを返し、入口付近の階段へと向かう。
「あっ!」
百八十度振り向いた瞬間、つい先程あたしが入ってきた校舎入口のドアに、腕組みをしながらもたれかかっている蒼ちゃんの姿が目に入った。
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