昼休み

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「ああ。私が柊で間違いはないのだが……ずいぶんと偉そうなお客さんだな」  言葉とは裏腹に、先生は不適な笑みを浮かべている。  そのまま掛けている眼鏡を中指で上げながら、ゆっくりと立ち上がり、白衣のポケットに両手を入れた。 「お前に話がある」  蒼ちゃんは横で談笑する女子生徒達を『黙れ』と言わんばかりに一瞥し、視線を先生に戻す。  女子生徒達は少し静かになり、何やら小さな声でコソコソ話を始めたようだ。 「今日は勘弁してくれ。仕事が溜まってるんだ。それにこの子達をここから追い出すことはできんぞ。ここに集まるのを楽しみにしている連中なんでな」  冷蔵庫を開け、女子生徒達にお茶の入った容器を渡しながら、先生は言葉を突き返した。  そのままデスクに座ると、コーヒーカップを口に運び、再度書類に視線を落とす。  それを見た蒼ちゃんは少し黙った後、デスクの横にあった丸椅子に腰を下ろすと、足を組みながら静かに口を開いた。 「『ゆりかご』について……と言ってもか?」 「!?」  書類から蒼ちゃんに視線を移した際、先生の目付きが鋭くなったのをあたしは見逃さなかった。
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