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「不思議な子だな。君と話していると落ち着いてくるよ」
「は、はぁ……。それはどうも」
褒められているんだろうか?
鬱陶しくはないですか? と、あたしは聞きたい……。
「君は何者だ? 彼が連れて歩いているということはタダ者ではないのだろう?」
そういえば、自己紹介してなかったなぁ。
うっかり忘れてた……。
「あたしは……」
「コイツはボクのペットみたいなものだ。気にするな」
ペ、ペ、ぺ、ペット!?
「ちょっと! 蒼ちゃん!」
彼の細い腕を掴みながら、力いっぱい前後に揺らす。
まさかそんな風に思われていたとは……。
まぁ、まんざらでもないんですけど……。
「安心しろ。ヘタなことを触れ回るほどバカじゃない。それにコイツにも関係無いとは言い切れん話だからな。だから連れてきた」
膨れっ面で蒼ちゃんの袖を引っ張るあたし。
それを無視しながらあたしの頭を《ペシペシ》と叩き、淡々と語る蒼ちゃん。
あたしにも関係ある……かぁ。
『あのこと』だとすると、あたしにとっては胸の痛い話だ。
「申し遅れました。九十九 千里と申します」
先生が何者なのかはまだわからないけど、とりあえず蒼ちゃんの過去を知ってるようなので礼儀を尽くす。
「ほう……。とすると、君があの有名な九十九財閥の次期当主か?」
「"元"ですけどね。色々事情があって、あたしは出家したんです」
その『事情』については話したくないけど……。
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