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「なるほど。入学者名簿を見た時に君の名前があったのでおかしいとは思ったんだ。九十九財閥とその影である存在の五条家。名家のお嬢様二人が揃って神明学園に来ていたのだからな」
凄いな……。光のことまで知っているのか……。
うすうす気付いてはいたけど、この人もタダ者ではなさそうだ。
「雇われの身である私が言うのもなんだが、なぜ神明に? 君達はそんじょそこらのお嬢様とは訳が違う」
「………」
「両家の跡取りは代々、帝国学院で修業するのが習わしだろう? たしかにウチは名門だが、帝国には劣るし、なにより"普通"の高校だ」
やっぱり詳しいな。どこまで話していいものか……。
黙ってあたし達のやり取りを聞いている蒼ちゃんを見ると、彼は無表情で首を横に振った。
これは恐らく《全てを話すな》というサインだ。
「神明には『成績上位五名の授業料免除』という特待生制度がありますからね。家を出て、お金の無いあたしはそれに頼るしかなくて」
嘘は言ってない。
しかし、本質を突いたものでもない回答をする。
「そうか。君も大変そうだな。だが、その容姿と頭脳があれば生きていけるさ。ところで月影 蒼よ」
あたしから視線を外しクルリと彼の方に体を向ける。
「君の名前は名簿に無かったぞ。あれば確実に気付いていたはずなんだがな」
そうだ……。あたしもそれは気になっていた。
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