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入学者名簿に蒼ちゃんの名前が無いのはあたしも少し作為が混じっている気はしていた。
みんなはただの入力ミスだと片付けていたけど、よくよく考えれば不自然な話だと思う。
「あれはボクが頼んだんだ」
「頼んだ? どういう意味だ?」
先生はポケットからタバコを取り出しライターで火を点ける。
一吸いし、吐き出した煙が風に乗って空に消えた。
先生タバコ吸ってたんだ……。
何か似合うなぁ。
「ボクは入学するにあたって、理事長にいくつか条件を提示した。それを受け入れないのであれば入学を拒否すると」
「ずいぶんと生意気な新一年生だな。となると、理事長も君のコトを知っているということか?」
「ああ。でなければ白紙の答案用紙で入学などできるはずもないだろう。神明に入ることを強く勧めてきたのは他でも無い理事長だ」
「白紙の答案? なるほど。神明学園史上初めて、入学試験を0点でパスした奴が現れたという噂は聞いていたが……君だったのか」
蒼ちゃんは元々、高校に進学する気はなかった。
それは金銭的な問題では無い。
なぜなら彼はどこの学校に行ったとしても学費がかかることはないからだ。
それは『特別待遇児』に認定された者の特権でもある。
進学を希望しなかったのは、この国の高等教育など既に習得しているというのが理由の一つだろう。
まぁ、あくまでも理由の一つなんだろうけど……。
そんな彼が神明学園に行くことを決めたのは理事長から届いた手紙を読んだからだ。
あたしも内容は知らないけれど、また蒼ちゃんと同じ学校に通えるのだからなにも文句は無い。
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