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「そうか……。柊 綾子。お前がA級戦犯でないことはわかった」
蒼ちゃんは少し目を細め、空を見上げた。
彼の瞳には闇のカケラも存在せず、先生に対して敵意が無いであろうことが見てとれる。
「いや……。結果的には私の蒔いた種が、悪の華を咲かせたということだ。どんな罰でも受け入れる」
軽く両手を広げると、先生は蒼ちゃんに真っ直ぐ視線を向けた。
それを受けた彼は、少し考えた後、静かに口を開いた。
「……では『ゆりかご』創設者として責任は果たしてもらうとしよう。しかし、その前に最後の質問だ」
「わかった。答えよう」
「ボクの母親……月影 摩耶の所在を知っているか?」
もたれ掛かっていた屋上の扉から背中を離し、質問を投げ掛ける。
そうか……。今回、先生と会話するにあたって、蒼ちゃんが最も問いたかったのはこの質問だったんだな。
「月影 摩耶……君の母親か。申し訳ないが私にはわからんのだよ。私は研究所を追われた身なんでな。その後の情報は、組織内の協力者から得てはいるのだが、月影学園の情報は入ってこないんだ」
額に手を当て、本当に申し訳なさそうに先生は自分の置かれている立場を語る。
なんとなくそんな気はしてた。
蒼ちゃんも恐らくダメ元で聞いたんだと思う。
「千里。念のため視てくれ」
あたしに顔だけ向けて頼む蒼ちゃん。
心配しなくてもいいよ。もう視てるから。
「大丈夫。嘘はついてないし、そもそも先生に邪気はないよ」
一応、報告。
まぁ、言うまでもないとは思うんだけどね。
「そうか。わかった」
蒼ちゃんもわかっていたようで、返事は早かった。
「???」
先生があたし達の会話を聞いて怪訝な表情を浮かべる。
確かに意味わかんないよね……今のやり取りだけじゃ。
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