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蒼ちゃんは屋上の扉から離れ、胸ポケットから鍵を出す。
そのまま柊先生に近付くと、彼女に鍵を渡しながら少し微笑んだ。
「この鍵を職員室に返しておいてくれないか? ボクはこのまま食堂に行こうと思ってるんでな。時間を取らせて悪かった」
そういえば、あたし達まだお昼御飯食べて無かったなぁ。
「えっ? このまま私を帰すつもりなのか?」
先生が驚きながら彼の顔を見る。
蒼ちゃんが過去に起こした事件の数々と、それに伴う暴力性を認識していたのなら当然の反応だ。
「ああ。千里が『邪気は無い』と言っているからな。ボクの敵ではないと判断した。コイツが言うなら間違い無い」
彼はあたしをチラリと見ながら敵意が無い事を先生に告げた。
「九十九……。特殊能力者なのは知っていたが、君は一体何の能力を持っているんだ?」
先生は驚きもせず、あたしの方に顔を向けながら質問する。
さすがは特殊能力研究の第一人者だ。
恐らく、特殊な能力を持つ人間を、数多く見てきたんだろう。
「蒼ちゃん。話してもいい?」
念の為、彼にお伺いをたてる。
本来なら絶対に他言してはいけない内容だからだ。
「ああ。構わない」
蒼ちゃんはあっさりと了承した。
先生の前であたしが『能力者』であることを彼がほのめかした時点で、返ってくる答えは決まっていたようなものだけど。
「先生。あたし実は、黒のカラーコンタクトを入れているんです」
着けていたコンタクトを左の方だけ外し、生まれついての青い瞳を先生に見せた。
「その瞳はまさか……『神眼』の持ち主なのか!?」
「はい……。この髪の毛も染めてるわけじゃなくて、生れつき淡い色をしてるんです」
「なるほど……『神眼』を持って生まれてくる人間は、アルビノであるかの様に色素が薄いというのは文献で読んだことがあるが、お目にかかるのは初めてだよ。そうか……君が……」
先生は何かを言いかけて口をつぐんだ。
まるで何かを隠す様に。
それにしても……やっぱり詳しいな。
先生は一体どこまで知ってるんだろうか。
神の眼とは名ばかりの、この呪われた瞳のことを……。
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