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「能力の全てを話すことはできませんが……あたしは、人が発する言葉や、その人自体に色が付いて見えちゃうんです。見える色によって、どんな心理状態か解るっていうのがあたしの能力の一つですね」
「なるほど……。共感覚というヤツか。とんでもない『ギフト』を持っているじゃないか。いや。君達、能力者の間では『神業』と呼ばれているんだったかな?」
「はい。先生が元いた組織で使われている『ギフト』と、あたし達の言う『神業』とは同義ですよ」
そう言いながら蒼ちゃんの方に目を向けると、何も言わず静かに彼は頷いた。
これでいい。
ここまでなら話したとしても問題無い。
でも、これ以上は口が裂けても言えないし、話すことは許されない。
「どちらにしろ、九十九がいる限り、最初から嘘などつけなかったということか……。完全に詰まれてたな。まいったよ、月影」
そう言いながら微笑んだ先生の顔は少しばかり悲しげに見えた。
「まだまだ聞かなければならないこともあったんだがな……。知りたいことが出来た時は、また保健室に行くことにするさ。これからはボク達に情報と知識を提供することで責任を果たしてくれ」
そう言うと、彼はあたしに目配せをした後、扉の鍵を解錠し、静かに開いた。
あたしも後ろから彼を追う。
「わかった……。いつでも保健室に来てくれ。九十九っ! 君も歓迎するぞ!」
屋上を出ていくあたし達の後ろから、先生が大きな声で言葉を掛ける。
あたしは振り返り、軽く会釈をしてから、屋上の扉をゆっくりと閉めた。
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