千里を彩る

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 校門を抜け、教室に入ると、クラスメイトの談笑により朝とは思えない賑わいを見せていた。  ちなみにあたし達三人は、一年一組で同じクラスだ。 「おっはよぉ」  グルリと教室を見渡すと、すでにほとんどのクラスメイトが登校していた。  これ程の人数が一つの部屋に入っているのであれば、この喧騒も頷ける。 「おはよぉ」 「おはよぉ! お三方」 「おいっす!」  皆と挨拶を交わして、あたし達は席についた。  まだ入学して一週間程だけど、既にみんな仲が良くなっている。  そんなクラスに居ることができる当たり前の幸せが、あたしにはとても尊く感じた。  あたし達が通う神明学園は、日本でもトップクラスの進学校だ。  その反面、自由な校風であることから競争率も高く、門戸は狭い。  あたしと光は初めから神明に進路を決めていた。  それを聞いた結衣が…… 「ウチも行く!」  と言い出し、中学二年の冬の模試ではE判定だったところを、一年間猛勉強して受かったという凄まじい逸話がある。  当時、結衣の家庭教師代わりをしていた光曰く…… 「結衣は一生分の努力をした」  らしい。  兎にも角にも、三人一緒に入学できて良かった。
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