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「のわああああっ!!」
細く狭い通路で、グレイブの悲痛な叫び声が響き渡った。
普段強気な彼は成りを潜め、背後から迫りくる恐怖から逃れるため、必死の表情でただひたすら前へと走る。
「ルカの野郎!普通巻き込んで気絶するか!?」
「いいから走れ!追いつかれるぞ!!」
グレイブの右隣には、愛用のライフル"ラトルズ・ネック"片手に激走するアルフの姿があった。
いつもなら大声を出すことのない彼にも余裕がなく、頬に流れる汗がどれだけ全力で走っているかという証拠。
いつも全力疾走していないという証拠にもなるが。
「……」
二人の後方には、頭部に大きなコブを作って目を回しているルカを脇に担いで走るユトがいた。
いつも通り無口・無愛想・無表情の三拍子揃っているものの、現在の彼は少し違う。
パッと見ただけでは見分けがつかないが、ユトの顔はわずかに、本当に僅かに青ざめていたのだ。
それは、付き合いにくい彼と長年苦楽を共にしてきた者にしかわからないほど微弱なものだったが、グレイブとアルフにはそれが判る。
たとえ三年という短い期間だとしても、同じチームの仲間なのだ。
ほとんど思い過ごしかもしれないと二人は認識していたが、今回は絶対そうだと当たりをつける。
背後から転がり迫りくる大きな岩球に、いくら彼とて焦らないはずがない。
だが、彼等は一体何故、この巨大な岩から逃げているのだろう。
それは、ほんの数十分前に遡る。
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