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しかし、とある日曜日に希の父と名乗る人が家を訪ねてきた。
なんでも、たった一人の母親が亡くなって、肉親と呼べる人間がいなくなった希に気遣い引き取るために来たらしい。
希は、イヤだと泣きじゃくりながらも抗議してみたが子供の言う事なんて聞いてはくれない。
“ワガママ”……そう言われればそれまでだ。
俺だって、そっちの都合で離婚して、忘れた頃に現れるなんて都合が良すぎると言ってやりたかった。
けど、結果が見えてたから言えるわけがない。
大人は卑怯だ。
俺達子供は、そんな大人の都合で振り回されるんだから。
「バイバイ和くん……」
別れ際の希の寂しそうな瞳と、その言葉だけが今でも記憶に残っている。
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