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「真理子ー、跳び箱出すから手伝ってー!」
少し離れたところから器械体操部の部長が、なでなでしている真理子先輩を呼んだ。
「はぁーいっ! じゃあ行かなきゃ…また来てねっ」
最後に真理子先輩は、僕に優しい笑顔を残して走り去っていった。
僕はそれからしばらくの間、ドキドキが収まらずにいた。
ぼんやりとしながら、下駄箱で上履きと靴を履きかえる。
頭の中から、真理子先輩の笑顔が離れずにいる。
お姉ちゃん……かぁ。
ホントに呼んだら、どんな反応するのかな。
いつか試してみたい気もする。
一人歩く帰り道。
今日は色々な部活見学をしてきたから、いつもより陽は傾いていて、真っ赤な夕焼けが辺りを包んでいる。
いつもなら隣で藤堂がぽけ~っとしながら、「今日も疲れたなぁ~」なんてつぶやいてるところだけど、今日はその藤堂さえもいない。
先生に呼ばれていったって、真理子先輩は言ってたけど、何かやらかしたのかな……
いつもはのんびりしてるくせして、その気になれば何をやらかすか分かったもんじゃない
それが藤堂という人間だ、多分。
まぁとりあえず、今日は楽しかったな。
卓球できたし、真理子先輩に会えたし、明日もこういう刺激ある一日にしたい。
そう思いながら、僕は今日という一日に終わりを告げた。
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