公園

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 雨が酷く降りしきり,大粒の涙は地面に打ち付けられては弾け,辺りは水嵩が増していた。 屋根の下にはここを住家とするホームレスが天井を見上げ,何やら小声で喋っている。    ホームレス「21台…」    ホームレスは視線を公園に沿う車道に移し,走り去っていく自動車の後部ランプを,仰向けのまま眺めていた。光りは徐々に遠くへ,しかし雨音は,激しくなっていった。    ホームレス「22台…」    新たな光りは青白く,こうして彼は日々をいだずらに耽る。 ホームレスはくしゃくしゃになっている煙草をポケットから取り出すと,少ないオイルの入ったライターにぶつぶつと何かを言いながら,何度か点火させた。彼が煙草に吸い付き胸を膨らました時,遠くどこからか金属の摩擦音が聞こえた様な気がした。    「キイ…キイ…」   、彼は仰向けのまま音のするほうへと視線を移したが,降りしきる雨と深夜の闇は,彼の視界を鮮明には描いてくれない。 しかし確かに音は聞こえる。彼には不思議と,心地よいメロディーに感じた。定期的に刻まれる得体の知れない音は,彼の同じ毎日の繰り返しに,間違い無く変化を与えてくれたのである。    「キイ…キイ…」    些細な心地よさは希望を失った様な彼の心を,当たり障りの無い快感を以って浸らしてくれる。僕はもうこのままだ,何も失うものは無い。ただ今だけが,僕の全てだ… 一時の蜜月は,無情にもそう長くは続かない。しばらくするとその音は,耳に響かなくなってしまった。ホームレスは煙草を吸い終えると,左手中指でピンと飛ばし,にやけた表情とともに上半身を起こした。首を曲げ腰をひねり欠伸をすると,今しがた鳴っていた音の正体が気になり考えこんだ。彼は音のしたほうを見ながら起立し,雨を遮っている屋根の範囲から手を出し,雨水を握りしめた。空を見上げるとうっすらと浮かぶ星が,彼の目には憎たらしく思えた。彼は再度音のしたほうを見ると,何かを決心した様な動向で歩きだした。一歩進む事に彼のみすぼらしい服は濡れていき,辺りには体臭が広がっていった。穴もあり防水加工の施されていない彼の靴はゆうに雨水を染み込ませ,歩く度にビチャビチャと音をたて,足先をひんやりとする感触が水虫の痒みを甘く誘う。彼は思った…    ホームレス「こんな真夜中に,何の音だったのか。」
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