橋本

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 橋本は居心地が悪そうに座り,しきりに辺りを見渡している。高橋は行儀正しく座り,宮城を見つめていた。宮城は,話を切り出す。    宮城「君達が常日頃職務に励んでいる事は,私として分かっているつもりだ。実は本日公園から変死体が発見された事を,既に耳にしたとは思う。現在遺体発見現場へ,職員を送ってある。勿論君達も行ってもらうのだが,その前に少し聞いて欲しいのがあるのだ」    橋本は相変わらず居心地が悪そうな態度で首を掻いたりしながら,宮城の話しを聞いているのか聞いていないのか着席している。    高橋「聞いて欲しいものですか?」    通話記録「ツツツツ…ザァザァ…たザァ…すザァすザけ…ザザザザザ…ツー…ツー…ツー…ツー…」    宮城「これは一週間前に本署に届いた発信者番号通知不可能通話の録音であるのだが,発信者番号の特定が出来なかった事と通話時に雑音が多くよく聞き取れなかった事が相俟って,当初よくある悪戯電話だと思い電話を受けた者も気にかけていなかった筈なのだが,昨日これと似た電話が一度目と同じ様に緊急回線ではなく本署に直接あった。それがこれだ」    通話記録「ツツツツツツツツ…ザァザァ…はっ…ザァザァはっ…ザァはっ…はっザァザァ…ツー…ツー…ツー…」    宮城「この二度目の電話を受けた者も偶然一度目に電話を受けた交通課の金城であるが,彼は恐らく不思議に思ったのだろう,この録音された通話記録を音声解析させていたみたいだ。そして解析作業を施し,ノイズが除去された一度目の通話記録がこれだ」    通話記録「ツツツツ…ザァたザァ〔ゴー〕ザァす…けザァ…ツー…ツー…ツー…」    宮城「そしてこれが二度目のほうだ」    通話記録「ツツツツ…はっザァ〔ゴー〕…はっザァ〔主よかの日〕…ザァはっ〔なれば〕…ツー…ツー…ツー…」    宮城「私が一度目そして二度目と言うのは,この一度目で聞こえる『助けて』と思わしき声と二度目の息苦しそうな吐息の主が,声紋分析で同一人物と断定されたからだ。恐らくこれは何らかの事件に巻き込まれている可能性があり,背後に聞こえる列車かモノレールか車か飛行機か何かが,電話の発信地付近に存在するのだろうか。金城からこれを知らされた私は,助けを呼ぶ声の主がプロファイリングデータに存在するか確認させた。」
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