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死の砂漠……
それはこの国"ログナス"の北西にある砂漠で、リッパーという魔物達の住み処、そして砂漠は急激な温度変化で身体と精神を削いでいく。
その地獄は絶対の死を与えるに相応しい場所である。
私が何をしたというのか……リッパーからアルク様を守って死線を渡りかけただけなのに、と少女の疑問は頭の中で縦横無尽に廻る。
リッパーとはこの世界の魔物、根元不明で正体不明である。
ただ刃物のような鋭い爪で人を斬っては、その返り血で生きていることだけがわかっていた。
そうして……死の砂漠への追放が執行されようとしていた。
追放期間はない。それは戻ってくるはずがない者に期間など意味がないからである。
つまり私は死ぬのだ。
そんな私は足を止める。腕を掴まれて止められたのに気づいてはいる。しかし、顔は見ないで背を向け続けていた。
少女の細い腕を掴んだのはアルク・ログナート皇子、何か言いたげな顔立ちなのだがなぜか言葉が出ない。
思いきって少女から口が開く。
「放してください。皇子」
少女は少年を見ず背を向けたまま言った。その言葉に周りは騒然とする。
普通ならば無礼至極の行動で牢獄行きだろう。しかし、もはや死刑である私をわざわざ牢獄に入れるなどしないのだ。
「絶対に戻ってこいよ。フィミ」
皇子である少年が発した言葉は重く、尚且周りに驚愕と嘲笑いを起こした。
胸が痛いのを少女は感じていた。
できることならずっと仕えていたかった。と……
「それはなんですか?願望なら―――」
「命令だ」
短く言い返された言葉に少女の顔は紅潮する。そして少年は少女の腕を放した。
――この時、アルクは15、フィミ12であった。
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