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逃げる中で思い浮かべるのはたった一人の兄、兄と呼ぶことを禁じられた存在を、私は追放された今でも求めていた。
血の繋がりはない。兄は養子として王に拾われた捨て子、母は権力ほしさに私を捨てて、兄を実の子として育てたと後に聞かされた。
普通ならば恨みを生んで嫌悪するところなのだろう。けれども、なぜか嫌いにはなれなかった。
(私は……甘かったのかな……)
剣を強く握りしめる。覚悟があるのか、というとそんなものはなかった。
私は魔物と一度対峙して死の縁まで落ちている。
しかし、結果的に死の砂漠に堕とされた私に死などいつであろうとも変わらない。
ならばできるだけ抗ってみたい。という自暴自棄へと変化した。
襲い掛かる体勢を整えた影は、少女の行動に動きを止めて慎重な動きをする。
少女は剣を影に迷いなく向け、目の輝きはなぜか快楽に満ちていた。
剣は蒼く先が尖り異様な刀身をしている。傷が至るところについているのに、刃はしっかりしている。
「これが……魔剣……」
輝きはまさに魔性の逸品。その光に少女は心を躍らせる。
剣は彼女の心を呑み込んでは呼応する。
彼女自身の力に魔剣"エクシズ"が触れバランスが崩れる。
これがフィミ・レイフに大きなモノを目覚めさせるのだった。
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