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黒煙が闇へと沈む荒野をまた一段と陰鬱にさせる。
そんな中、赤いマントを纏った存在が黒い存在を八つ裂きにしていた。
それはもはや生き物とは到底言えない姿にまでバラバラ、血は黒一色の中でも鮮明に赤く染めている。
「あはっ……あはははっ」
狂ったように嘲笑う声、まるで魔物に堕ちたような気がするくらいに彼女は自身をどうにもできない。
暴走というべきか、発狂というべきなのか、完全に別人という感覚が彼女を襲っていた。
しいて言うならば……
"裏"が表から自由を奪っている。
やがて嘲笑いは止む。そして快楽が去って虚しそうな顔色を彼女はみせた。
「……ねぇフィミ、僕は君が羨ましいよ……」
……
周りには誰もいない中で少女が口にするのは少女の名、その言葉の直後彼女の頬に何かが流れた。
その何かを今の彼女は把握する術を知る余地もなかった。
「南……いこうか……」
言葉に返事はない。けれど少女は南へと歩き出したのだった。
その姿は何も変わらないフィミ・レイフなのに、なぜか別人のように歩いていった。
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