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暗い夜道に私は座り込んでいた。何がなんなのか何も掴めずにただただ茫然としている。
目の前で起こった惨劇に身体が全く言うことを聞かず、意識は硬直という思い何かに変わっていた。
「そんな……」
そう感嘆し、私の身体は震えながらもやっと動き出した。
身体中を襲っていたのは絶望からの恐怖、それが震えをつくり身体の動きを封じていた。
私は立ち上がり必死に駆け寄る。
そう、自分を庇い傷を負った存在へ……
「アルク様!」
その存在"アルク・ログナート"は私の主人、漆のような黒の髪、その髪は多少長く切り揃えられている。
髪の色と同じ装束のアルクは陰鬱であるはずの黒を神秘的な何かに変えているようだった。
しかし、そんな彼でも今は陰鬱な闇に負けて夜の町に呑まれようとする。
そして、そんな彼を私は抱き締めた。
「……ッどうした?……お前らしくない……」
アルクは平然と私にそう言い捨てた。その軽口と共に赤い何かが一緒に吐き出される。
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