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"成功"という二文字は確かにアルク・ログナートに宿った。
「ぁぅ……」
断末魔の声をあげたのは仕えていた少女の方だった。
背中の激痛に思わず顔をしかめる。
敵は彼女の背に鋭い爪を突き立てていた。
「まだ……ッぐ」
身体の悲鳴を抑え込もうとするが、敵は全くその行為を許しはしない。
命乞いさえ許さないのだろう。
敵は爪を引き抜き爪に付いた血を舐める。
少女はその隙を使い、身体を無理やり立たせて敵に刃を向ける。
紅い髪は靡き、まるで焔のように揺れる。
敵を睨み付ける冷酷な瞳は紺碧から紫色へと変異し、優しさという輝きを失い殺意という闇に満ちる。
「おのれ!」
叫び声が上がったときにはもはや戦いは終わっていた。
それは本の一瞬である。
一息で異様な存在に近づき、腕を撥ね飛ばす。
そして取り直しては胴体を真っ二つにした。
血しぶきの中を悠然と立つ少女の姿は美しい絵として魅せられる。
「……アルク様!」
戦いの終わりと共に少女は自分の主人に近づく。
主人である青年は静かに眠っていた。それは彼女の力が生んだモノである。
黒の髪は寝ていても綺麗に流れていて、美男子であると再認識させられるようだった。
結局ボロボロの服だけが戦いの跡を残した。
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