賽は酷にも投げられる -story one- -story start-

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――ログナス帝国王宮 「なぜ民の為に動けないのですか!?閣下」 幼くもしっかりした声が王宮内に響き渡る。それを玉座に座る男は平然と聞いていた。 国王への謁見、それは普通なら考えられない内容であった。 第二嫡子の皇子が謁見の依頼をし、わざわざ国王に話をしているのは何もどうでもいい内容ではない。 皇子である少年が抱えていたのは少女、それも血塗れとなりボロボロでいつ死んでもおかしくはない状況である。 国王は無言を保っていたがやがて口を開いた。 「よかろう。しかし、条件がある」 「条件?」 低く豪快な声が発した内容は救うことへの了承が入っていた。 しかし、条件は無情という二文字を具現化したようなものだった。 「その娘は傷を癒し、その後この国から追放する。追放先は死の砂漠だ」 死の砂漠――それは死刑に使われる場所だった。 この王は命ひとつを考えるほど優しい……存在ではないのだ。 「そんな……」 少年は愕然とした。救うと言っておきながら、結局は死へと返す。そんな王に憎しみさえ感じているのだろう。 目は殺意に満ち、今にも飛び掛かりそうだった。 「アンダル、その少女にアレをやれ。救うのだ」 その言葉に横にいた男が少年から少女を引き受ける。 そしてどこかへいってしまった。 少年は全く動かなかった。 それはもはや脱け殻のようで、涙だけが綺麗に流れていった……
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