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なんで……私動かないんだろう?
……
「おい!しっかりしろ!」
「アルク……様ッ……」
身体は悲鳴よりも恐ろしい感覚、もはや機能が停止していくのを彼女は感じていた。
そんな彼女を少年は抱き抱え必死に王宮へ走った。
自分だってボロボロなのに……
私は……なんて幸せなんだろうか……
……
目を覚ます。そんな当たり前の行動を少女は驚きの目である。
身体は全く傷を残さず完全に癒えていた。
「目が覚めましたか?」
綺麗な声が少女の耳へと入る。
声の方に目をやった先には上級貴族のアンダル・ヴェルシーナが嬉しそうに彼女を見つめていた。
「アンダル様、私は――」
「大丈夫。アルク様も君も無事だ」
生きていることが奇跡的な気がして、夢だと思い頬をつまんでみる。
――痛い……
『夢ではなかった。』という現実に私は安堵した。
「目覚めたか?……」
低く豪快な声……聞き覚えがないはずがない。それは一番敬意を持っていて、一番恐怖している存在の声だった。
「へ……陛下ッ……」
「フィミ、貴様には私から勅命を渡そう」
いつもより優しい口調で私は安堵した。同時に畏怖が芽生える。
国王の娘でありながら娘ではないと否定され、しかしこうして使用人にされている。
「死の砂漠にお前を追放する」
やはり私は……
いらない存在なのだろうか……
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