賽は酷にも投げられる -story one- -story start-

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なんで……私動かないんだろう? …… 「おい!しっかりしろ!」 「アルク……様ッ……」 身体は悲鳴よりも恐ろしい感覚、もはや機能が停止していくのを彼女は感じていた。 そんな彼女を少年は抱き抱え必死に王宮へ走った。 自分だってボロボロなのに…… 私は……なんて幸せなんだろうか…… …… 目を覚ます。そんな当たり前の行動を少女は驚きの目である。 身体は全く傷を残さず完全に癒えていた。 「目が覚めましたか?」 綺麗な声が少女の耳へと入る。 声の方に目をやった先には上級貴族のアンダル・ヴェルシーナが嬉しそうに彼女を見つめていた。 「アンダル様、私は――」 「大丈夫。アルク様も君も無事だ」 生きていることが奇跡的な気がして、夢だと思い頬をつまんでみる。 ――痛い…… 『夢ではなかった。』という現実に私は安堵した。 「目覚めたか?……」 低く豪快な声……聞き覚えがないはずがない。それは一番敬意を持っていて、一番恐怖している存在の声だった。 「へ……陛下ッ……」 「フィミ、貴様には私から勅命を渡そう」 いつもより優しい口調で私は安堵した。同時に畏怖が芽生える。 国王の娘でありながら娘ではないと否定され、しかしこうして使用人にされている。 「死の砂漠にお前を追放する」 やはり私は…… いらない存在なのだろうか……
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