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【一六八三年 四月九日】
昼間の賑わいが嘘かのように静寂が訪れた京の都を、一人の少女が歩いていた。
とうの昔に辺りは闇に包まれており、決して少女が出歩くような時間帯ではない。
ところが、その少女はそんなものを気にした様子がなかった。むしろ、闇を好んでいるようにさえ見える。
「今日は満月なんだ……」
ふと歩みを止めた少女は夜空を見上げ、ポツリと呟いた。満天の星空も出ているのだが、少女の瞳に映るのは妖しく光る月だけだ。
「……今夜はアレが出そうだな」
一瞬眉をひそめた少女は意味深な言葉をその場に残すと、再び何処かへ歩き始めた。
これが全ての始まりに繋がるなど、夢にも思わずに──。
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