開かれる夢の彼方

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「みんな、お待たせ」 入って来たのは隣のクラスの颯真和輝〈そうま かずき〉だ。 和輝も小学校からの付き合いで、クラスは違えどこうして一緒に行動することが結構多い。 それにしてもだ。和輝はいつ見ても人懐っこそうな顔をしている。男の俺から見ても可愛い顔をしていた。 可愛い顔とは詰まるところ童顔である。付け加えて桃髪に小柄な体格な為、ボーイッシュな女の子のような印象を受けてしまう。 長い付き合いだが、相変わらず身長は低い。 去年測った時はギリギリ一六十センチを越えたみたいだが、今年はあまり成長していないように見える。 和輝の両手には人数分の缶ジュースがあった。それを一人一人に手渡していく。 「それじゃあ、全員揃った所で頂きましょうか!」 文華の号令を合図に皆、食事を始めた。 包みを解き、弁当箱の蓋を開けると、目の前に広がるのは色とりどりの和洋食が詰められていた。 「みんな。こっちもどうぞ~」 淺野の弁当は中華だった。 二人の料理はどれも食欲をかき立てるほど美味そうだった。どれから食べようか迷ってしまうな。 少し悩んだ後、文華が持ってきた特大弁当箱から鶏の唐揚げを箸で掴み、口に入れた。 「む! こ、これは……!」 カリカリに揚げられた唐揚げは、とても歯ごたえがあり、噛む度に肉汁が溢れ出す。 時間が経過しても、この味を維持出来るとは、一体どんな業を使ったのか大変気になる。 次にサラダを頬張る。 「このシャキッとした歯ごたえ、まさか――!」 一噛みしただけで分かる、このしっかりした歯ごたえ。
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