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「――申し訳ありません……あなたを、護り切れず……」
目の前には、そう呟く女性がいた。
美しい、という言葉が陳腐に思える程に、神々しいまでに黄金に煌めく女性だった。
彼女は泣いている。
もしかしたら、降り注ぐ雨がそう見せているのかもしれない。
きっと、とても凛々しい顔立ちなのだろう。
でも今はとても泣きそうで、顔をクシャクシャにしている。
仰向けのままそう思い、これが夢だということに気付かされる。
だって俺は、彼女を知らない。
今居るこの場所も知らない。
そう、これは夢。だからもう謝らないでくれ。
「喩え、人堕ちしようと必ずあなたを捜し出します。 必ず――」
彼女の長い、黄金の髪に伝わり落ちる水滴。
それを顔に受けながら彼女を見続けた。
俺は彼女を知らない。なのにどこか懐かしい、そんな気がした。
「だって、私はあなたを――――」
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