開かれる夢の彼方

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――物語を語る上で、まずは必要なコトをしなければならない。 つまり、自己紹介である。 俺の名は来栖暁人〈くるす あきと〉。 この江河市に住み、龍焔寺学園に通う高校二年生だ。 両親は現在、海外出張していて家には四ヶ月ぐらい帰って来ていない。 何故か幼なじみで、隣に住んでる文華に俺の事を頼んだらしい。 実に良い迷惑だ。 隣を歩いてる少女は朧木文華〈おぼろぎ ふみか〉。 長い白っぽい金髪――プラチナブロンドをツインテールにしているのと、いつもツンツンしてるのが特徴。 朧木家という由緒正しい名家のご令嬢だ。 文武両道、才色兼備と常に完璧を誇る超人でファン倶楽部まであるらしい。 何故か今は実家を飛び出して、俺の家の隣に住んでいる。 俺と同じ二年生で、これまた同じクラス。 コイツはいつも何だかんだ言って、俺の世話を妬きたがる。 巷で聞く、ツンデレと呼ばれる人種だろうか? しかし、そう思うと何故か可愛く見えてくるから不思議だ。 実際にかなり可愛いが。 「何一人でニヤニヤしてんの? マジキモイ」 前言撤回。全然可愛くない。うわぁ、という表情は減点だ。あと、この毒舌がなければ、少しはマシになると思うのだが。 などと考えている内に学園が見えてきた。山地付近の高台に設立している為、坂道を登って行かなければならない。お陰で足腰が鍛えられると、皮肉を込めて言おう。 ここに学園を設立した理由は二つあるらしく、一つは面積。 山地の一部を買い取って出来たその広い敷地面積に、校舎以外に体育館や美術室など、どこにでもある設備を"本格的に大規模"に造ったんだとか。 もう一つは、龍焔寺学園恒例の適性授業なのだが、それは追々語るとしよう。 校門に到着すると、まだチャイムは鳴っていないようだった。 どうやら文華に詫びを入れずに済みそうで、ホッと安堵した。 上履きに履き替え、俺達は教室へ向かう。
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