はじまり

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本題に入って少し、成橋さんが戻ってきた。 「お待たせ致しました、ジャスミンでございます」 「ご苦労様。遥奈さん、頂きましょう」 「ありがとうございます」 そう言いながら、飲もうとしない私。 その側で司がティーカップを手に、熱々のジャスミンを冷ましている。 そう、私は猫舌なので熱いのは苦手。 それを理解している夫人は、何も言わない。 むしろそんな司をナメ回すようにうっとり見ている。 …クソババァ…。 会談もようやく大詰め。 今回は、ここでおいとまする事に。 「本日はお忙しい中、ありがとうございました。 大変勉強になりました。 ジャスミンティーも、美味しかったです。」 「いいのよ。またいらしてね」 部屋を出て、ロビーを通り、車に戻る。 「…はぁー」 大きなため息が出る。 そりゃそーだ。あのオバサン、何度も司を見てた。 「…何も思わないの?」 「気にするような事ではありません。私は常に遥奈様を見ていますので。」 ドキッ …不覚。司なんかにときめいちゃったよ。 「で、これからどーするの?」 「12時を回っておりますので、岐槻(キツキ)シェフのレストランで昼食です」 「やった~!」 岐槻シェフは、有名なフレンチレストランを経営している。 この岐槻シェフは、私の昼食専用と言っていい程頻繁に通っている。 だってフレンチ好きなんだもん。 …それにしても、司は私の好みをよく分かってる。 くやしいけどそれは認める。 それでもやっぱり仲良くはなれないんだと思うと、悲しくなる。 …もっと砕けていーのに…。 どーしたらいーかわからなくて、食事中もうわの空だった。
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