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「はーい、次の目的地に到着ー」
「マジでスルーしやがった……てかここどこよ?」
まぁ、妹の無事を今は信じるとして。ここは住宅街の路地か?
「次の目的地まで120メートルの地点です。勇者さんにはそこで装備を整えてもらいます」
「装備を? と言うか俺、風呂場に入ってた恰好のままだし!? なぜか腰巻だけはあるけど……」
「サービスですよ。サービス。さすがにそれがないと変質者ですからね」
いやこの状態も充分変質者だぞ……しかも夜中に裸は寒い……俺勇者だよね?
「ある意味勇者じゃないですか」
「そう言う事を言わせたかったんじゃねぇよ。と言うか装備って……」
文句を言いつつも俺はスタスタと前の道をまっすぐ歩く。いやだって、行くしかないし。
「そう言えば魔王ってどこにいるんだ? 魔界とかか」
「いえ、この町内です」
「近っ! 近いよっ! 魔王なのにそんな近くにいていいのっ!?」
「えー、だって遠いと。この話短編で済まなくなるじゃないですか」
「またメタ発言キタコレ! もうツッコまねぇよ? もうスルーで行くよ?」
「あ、目的地に着きましたよーっ。ここで装備やアイテムを整えましょう」
おぉ、もう着いたのか。だけどこんな近くに武器やとか道具屋とかあったっけ? 妖精が指し示す方向を見る。
「って……ここコンビニ?」
「はいコンビニです」
「……俺にここに入れと?」
「はい」
「金もないのに装備を整えろと?」
「はい」
「ここ友達が幼馴染がバイトしてんだけど、このタオル一丁で入れと?」
「はい」
「いや待て待て待て待ていっ! 俺ここに入る資格、何一つも持ち合わせてないよね? それどころか通報されるレベルですよね!?」
……。俺と妖精の間に無言が通り過ぎる。
「うーん、まぁカラーボールぶつけられる程度で済むんじゃないんですか?」
「それって程度で済んでねぇよ! もう明らかに通報五秒前だろ!」
「いやですけどカラーボールが体に当たれば。『あ、これボディペインティングなんで』って誤魔化せるじゃないですか?」
「いーやいやいや、誤魔化せてないよ? だからと言って往来でタオル一丁でいていいはずがないよ!?」
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