47人が本棚に入れています
本棚に追加
……けれど
世は男尊女卑、軍の取り仕切る時代。
軍の命令は絶対で
男の言葉に女は逆らってはいけない時代。
そんな時代に
私の言葉は何の意味を持つというの……?
言ってもただ彼を困らせるだけ
……私にはただ笑う事しか出来なかった。
同時に零れ落ちる涙。
彼がそれを見て悔しそうに顔を背けた。
それを見て私は思った。
嗚呼……貴方は本当に優しい人なのだと……。
「どうか無事に帰ってきて」
そんな貴方を困らせない様に私は貴方を送り出す。
精一杯想いを言葉に乗せて。
貴方は私を固く抱き締めて、
くちづけを落として。
そして小さな赤い鈴をくれた。
これを自分の事だと思って
持っていて欲しいと。
私はまた涙を零して
鈴を固く握りしめた。
彼はそんな私の様子を確認すると
そっと微笑んで戦場へと旅立って行った。
それが……私が最後に見た貴方の姿だった。
最初のコメントを投稿しよう!