1人が本棚に入れています
本棚に追加
おいらは今朝のクラス替えの掲示板を見て、とても驚いた。彼女が再びおいらとクラスになったとかどうかと言うレベルではなく、彼女が進級出来た事に驚いたのだ。去年の夏休み明けから全く学校に来なくなった彼女が、まさか進級出来たなんて。保健室登校でもしていたのだろうか。そもそも保健室登校なんて制度が本当に存在するかどうかなんて、不登校児でないおいらは知らないし、もしかしたら義務教育中は学校に行かなくても進級出来るのかもしれない。
ともかく、不登校児であった彼女からのみ、おいらはいじめを受けた事がない。それなのにクラス全員から一度以上いじめを受けた事があるだなんて書いたものだから、彼女は腹を立てている。らしい。
クラス全員とは書いたものの、当然不登校児である彼女は除外されるとばかり思っていたけど。次書くときはもっと事細かく書かないと。
「そういえば自己紹介が遅れたわね。私の名前は」
「愛洲……、溢母……」
おいらは彼女より早く、彼女の言葉を口にした。
「覚えていたのね。尻無浜君って人の顔と名前を覚えるのが苦手だから、てっきり忘れられていたと、そもそも覚えられてもいないと思っていたわ」
「……おいらとしては、愛洲さんがおいらの事を知っていた事にびっくりだよ」
一言も話した事なかったし、二学期からは一度も顔を見ていなかったし。その上おいらの記憶力の無さまで知られているなんて。
「私は尻無浜君と違って人の顔と名前はすぐに覚えられるの。尻無浜君こそ、そんな記憶力でどうして私の名前を覚えていたのかしら」
どうして、か。と言っても、思春期の男子がロクに話した事のない女子の名前を知っている理由なんて、大抵一つだけなんだよなぁ。
「……去年の自己紹介の時、愛洲さんの顔を一目見て可愛いなって。人形みたいだなって。すごい印象的で」
「それは光栄だわ」
「家に持ち帰って等身大着せ替え人形にしたいなって。色んなお洋服を着せたいなって。それに服を脱がせてお医者さんごっこもしたいし抱き枕にもしたいなって」
「それは不光栄だわ」
「……ごめん」
おいらはとりあえず謝った。
最初のコメントを投稿しよう!