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本来ならば…正直に晒け出すならば、
一哉はもうこの時から狂っていた。
心は病むどころか、死んでいた。
孤独が彼を押し潰していた。
距離が彼を引き裂いていた。
時間が彼を歪めていた。
ただれた心をぶら下げて、
それでも何食わぬ顔で出勤し、普通の会話を交わす。
いつもと変わらず職務を全うする。
それを可能にしたのは、それでもまだくすぶる一哉の高いプライドと過剰なまでの自意識。
「だって仕方ないじゃん」
何に向けた言葉なのか、それすら考える余地もなかったが、その日一哉は初めて心の底から、この言葉の意味を吐き出した。
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