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「どのくらい食べる?」
「そんなに多くなくていいわよ」
「わかった」
「……」
「……」
それからしばらく沈黙が続いた。
どちらから話しかけるでもなく、部屋には鍋のぐつぐつという音とシンジがネギを切る規則正しい音のみが反響する。
アスカの方を見ると、彼女はぼーっとカーテンの引かれた窓を見つめている。
シンジは、気を引こうとしたわけではないがカーテンと窓を開けた。
空ではあちこちで星が光り、大きな月がまるで夜空の王者のように堂々としている。
今夜は満月だ。
「アスカ、空がきれいだよ」
「……ん」
彼女はリビングのイスから立ち上がり、ベランダに出て夜空を見上げる。
青い瞳に星や月の光が映って、まるでもう一つの夜空のように輝いている。
思わずアスカに見とれていたシンジだったが、刹那、鍋が吹き零れる音で我に還り、台所へ向かいうどんを準備する。
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