― beginning ―

2/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
『本日の管理エリアは、A-52からD-45の範囲となっております』 画面に映し出された文字を、丁寧になぞりながら目を通していく。 『先日、不運なことに運営の橋崎が事故にあいました為、急遽、あなたの担当エリアが通常に比べて拡げられることとなりました』 通常に比べて‥って倍近くあるじゃないか。 1日交代制なのに、いったいどうしろっていうんだ? こんなに広範囲をひとりで観られるわけないだろう。 適当に手を抜くしかないな。 『この件に関しましては、試験部の大塚部長からの強い要望による采配となっておりますので、管理課としてくれぐれも失態のないよう、よろしくお願い致します』 はぁ、とため息しか出てこない。 試験部部長が絡んでるんじゃ適当にやるわけにはいかない、か。 それにしても、なんで俺なんだよ? 文句はあるが、これも仕事。 末端は上からの命令に従う義務がある。 特に管理課は試験部の中でも対処・処理専門の使い走りだ。 『―了解―』 読み終えた画面に現れた文字。 これにタッチすればこちらが完全に任務遂行を了承したことになる。 ―拒否―って出たらおもしろいのになー。 などと考えながらも即座に―了解―を押す。 初めから拒否権などないのだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!