203人が本棚に入れています
本棚に追加
空の首に左手を掛け、右手が体を這う。
きもちわるい
手が、父親が、体が。
汚れていく自分を妬ましく思うような、そんな気持ちになっていく。
そんな空を父親は、高笑いした。
「お前はもう、綺麗じゃない」
そんなことは、わかってる。
そういいたい気持ちを空はグッとこらえた。
「っ……あ!」
不意に空の首に力が入る。
空は思わずその手を掴んで抵抗しようとしてしまう。
そうしてもがいて、息を求めていると、空の手に力が入った。
「いってぇ!」
爪が、食い込んだ父親の声が浴室内に響いく。
その瞬間、空の瞳が小さく怯えた。
「ガキが!!ガキが!」
時すでに遅く、何度も繰り返し空の頬を平手が打ち交う。
「ごめんなさいパパ、ごめんなさい…」
瞳に怒りを宿した父親はもはや空の言葉が只、油になっていく。
刹那、母親の声が聞こえた。
「ねえ、ソレ、死んじゃうから。息してんの?」
父親の荒い息が止み、気を失いかけている空を浴室から連れ出した。
「生きてるよ。生き地獄。俺に逆らうから」
父親は小さく笑い、自室に空を連れ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!