一畳の部屋

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空の部屋には、小さくたたまれた寝具 といっても、使わなくなった夏布団が一枚だけだが。 とにかく、それと 部屋の壁を埋めるように辞書や参考書、広辞苑などが ところせましと並べられていた。 おそらく、彼の両親のものだろう。 彼は、誰に教わるでもなく その本を全て読破していた。 狭い部屋にはその本と、布団。 そして、空がまだ母親に抱かれていた頃に買って貰った テディベアのぬいぐるみだけだった。 環境も悪く、満足に足を伸ばして寝るどころか、座ることも難しい。 そらは、毎日体を海老のように曲げて眠るのだ。 掃除は出来ないから埃の量もとてつもなかった。 栄養もろくに取れない。 空はたまに、貧血のような状態になってしまうのだった。 だが、どんなに弱っていても両親は空を死なそうとはしなかった。 【後が面倒だから】 そんな理由で。 両親のどちらかが帰ってくると虐待は始まった。 玄関が開く音に、空は慌てて本を隠した。
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