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「食事が出来ました」
掠れそうな声で空は母親に言った。
母親は空を睨み付けると、テーブルに付く。
しばらく沈黙が続いた。
空はそれを見て、安心した。
それは、母親の盛り付けに合格したからだ。
「掃除は?」
「終わりました」
「じゃあ、帰れ。早く!」
空を責め立てるように追い詰めていく。
空はあわてて部屋に帰った。
しばらくして、父親が空のもとに来た。
「空。来い」
空は急いで外に出る。
出るが早いかのうちに、空の手首を掴むと、力強く引っ張った。
「……ッ」
空から苦痛の音が漏れる。
父親は空を壁に押し付けると、空の作った食事のわずかな残りを空の舌に這わせた。
空はそれを必死になめとると、父親から皿を受け取った。
「汚っ」
父親はそう呟くと、空を台所方向に突き飛ばした。
洗ったら部屋に戻っとけよ。
そう冷たく言い残すと、部屋中の電気を消して、自室に帰っていった。
空は真っ暗な部屋で瞳に涙を溜めながら食器を洗う。
ほとんど捨てられている食物を見て、空の心にはまた、傷がついていた。
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