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「アリス、アリス。」
「なぁに、お姉様?」
「イーディスも呼んできていただける?」
「どこにいるか、わからないわ」
「多分書庫に篭っているんじゃないかしら。」
「お姉様と一緒でイーディスは本当に本が好きね…。」
「そういえばアリスはあまり本を読まないわね。」
「…だって訳がわからないもの。」
「くすくす、さすがアリスね。じゃあイーディスをお願いできるかしら?」
「はーい…」
広い庭園の噴水前の机で本を読むお姉様。アリスは書庫があまり好きではないが、今回ばかりは仕方ない。
もうすぐ婚約者との約束の時間がくるのだ。
「イーディスももうこんな時間なのに……。」
あらかじめ姉の婚約者がくると言っておいた筈なのに書庫に篭って何をしているのか。
熱中出来る何かを持つ妹が少しだけ羨ましく、そして少しだけ苛立った。
庭園の角を曲がり、進んで行くと何故か建物が遠くなった気がした。
いつもどおりの道を歩いているのにあれよあれよと家が遠ざかっていく。
「……あれ?」
いくら広い庭園だとしても、迷子になることはない。
ここで暮らしてもう何年も経つのだから。
「…ここは……」
自分の家、だった筈。
けどその形はどんどん歪んでいく。
「アリス。」
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