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「・・・ん。」
光が眩しかった。
倒れたばかりでくらくらしているのだろうか。
しかし、意識は可笑しなことにはっきりとしている。
「アリス。」
名前を呼ばれ、ようやく私は自分以外の誰かがそこに居ることに気が着いた。
目を凝らしてみると、徐々に視界が広がっていく。
広い庭の中に噴水がある。でもここはあの屋敷ではない。
「待っていたよ、アリス。」
声の主は羽付きの帽子をかぶり、こちらを見て笑っている人。そしてもう一人に関しては無愛想に突っ立って、じっとこちらを見ている。
「・・・・だ・・・れ・・・?」
言葉が濁る。
怖くて脚が震える。
見ず知らずの男が二人、目の前に立っている。
お屋敷の中に入り込んだというなら、彼らは泥棒・・・
・・・
「っ――っ!!!」
走りだそうとした私の目の前に広がった世界は、まるでお屋敷とは違っている。
驚きと脱力に、足からこけてしまった。
「大丈夫?アリス」
帽子の男は手を差し出してくる。初対面のはずなのに、どこか馴れ馴れしい。
しかもまた笑っているし、名も名乗っていないのに知られている。
「いや―っ!」
払いのけた手に思いのほか力が入ってしまい、大きな音が響いた。
仕返しとかされてしまったら…と、さらに恐怖が募る。
青ざめた顔で見やれば、きょとんとした顔をした後、男は声を上げて笑った。
「アリス、怖がらなくても大丈夫さ。それに、ほら」
噴水の水が宙に浮く。
そこに写っていた映像はイーディスそのものだった。誰かと話をしながら歩いているようだ。
「イーディス―っ!ここは…っ!?」
「どうやらこの子は、迷い込んだようだよ」
試すような瞳が私に降り注ぐ。堪らずイーディスを写した水を手で掻き混ぜ、ぐちゃぐちゃにした。なのに水は再び戻り、イーディスを写す。
恐怖で埋め尽くされていた。
早く戻らないといけない。その思いは私をせき立てるけれど、眼下は恐ろしいものばかりだ。
足に力が入ってくれない。
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