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いつものカウンターに腰を下ろすと、裕子さんは何も聞かずにカクテルを作り始める。
その鮮やかな手つきを眺める私に、まるで「これでしょ?」とでも言うように裕子さんはクスッと笑った。
大好きな優しい笑顔。
最高に居心地がいい。
小さく頷きながら上着を脱ぐと、それがゆっくりと私の手から離れた。
「…シュン君。」
「いらっしゃい。」
奮発して買ったリアルファーの付いたコートをハンガーに掛けながら、シュン君は笑う。
いつ見ても可愛い男の子。
「ありがと。」
「美穂さん、今日も綺麗。」
そして口も上手い。
彼は、この店の女主人である裕子さんの甥っ子らしく、よく手伝いに来ていた。
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