◆第一章◆〈 燕雁 〉1

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 瀬戸麻美は、玄関のドアを開けた。  昼下がりの光が心地好い。  歩き始める。  遠目に見える山には、びっしりと緑が覆い茂る。  強い風に煽られ、一斉に騒めく様は、まるで、緑色の炎を纏ったようである。  静かな町並み。  犬の散歩、主婦の会話、走る自転車・・、閑かな風景だ。  都会の喧騒から離れているとはいえ、電車で20分程揺れれば、高いビルが見え始める。  人影疎らな路地を歩く。  色白の肌。  細い顔。  くっきりとした目鼻立ち。  薄いメイク。  セミロングの髪は、軽くカールしている。 チョコレートブラウンの髪色が、太陽光によって赤みが増して見える。  すらりとした体つきに、サンドベージュのワンピースが、よく栄える。  裾からは、膝が見え隠れする。  綿を基調にし、セルロース系の繊維を織り込んだ生地は、歩く度に、しっとりとしたドレープ感が漂う。  胸の膨らみ辺りに、三つの花弁をデザインしたラインストーンが施してある。  ラインストーンの直径は五ミリ程度だが、それが、百個以上ちりばめられれば、実に、きらびやかである。  具体的に何の花弁かは特定しずらいが、誰が見ても漠然と花弁だと分かる。image=399104578.jpg
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