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記憶の中に、強烈な焼印を押され、決して忘れることのない光景となった。
麻美は、この庭を、
"お花畑のお庭"と、名付けた。
初めて独りで訪れた日のことだった。
この家には、石を積み上げた造りの塀があった。
ブロック塀とは異なる、確かな品格があり、"塀"というよりは、"石垣"という言葉が先に頭に浮かぶ。
この塀の高さは、中学生程度であれば、見通すには何ら弊害はない。
しかし、幼い少女にとっては、立ちはだかる難関以外の何物でもない。
門の近くには、雑種の中型犬が繋がれており、近づく者を拒んだ。
少し吠えただけで、少女にとっては、十分な恐怖に値した。
仕方なく、塀の外から
"ぴょんぴょん"跳ねてみた。
遠く及ばなかった。
幼心にも結果は分かっていたが、そうする事しか出来なかった。
屋根の上の小鳥、塀の上を歩く猫が羨ましかった。
諦めて家に帰った。
2日間後、家の物置から金属性のバケツを持参した。
バケツをひっくり返し、踏み台にしようと考えたのだ。
家からは、約200メートルの道程。
自分で運べて、踏み台になるものとして、バケツを選んだ。
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