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「たばこ屋さん?」
「どっちかつーと駄菓子屋かな?ここも友達ん家。」
「へぇ!」
路地を抜けると少し広めの道に出た。そこはT字路になっていて、真っ直ぐと右に道がある。広め、って言っても車1台分が通れるぐらい。車同士のすれ違いは、どちらかが近くの民家の土地に逃げ込まないと無理そうだ。
歩いてきた道から左手に『たばこ』と書かれた小さな看板がぶら下がった小さな店。ジュースの自販機が2台。ガチャポンが2台。郵便ポストも建っている。
「中入りたい!」
「やってないんちゃう?まだ3日やもん。」
「何だ…。」
「まぁ、また今度な。あ、因みに俺ん家はあそこ。1番向こうの端。」
「おお!近いね!」
「まぁね。」
ヒロさんの指差す先に、道に沿って並ぶ家が4軒。
ホントに地元なんだ!
ちょっと楽しくなってきた。
「ここ曲がるの?」
「いや?」
「まだ真っ直ぐ?」
「もうちょいやて。」
そう言って再び歩き出す。
「あ、右に見えるあそこの角の店。薬屋。」
「わぁ古い!」
「やってるかは知らんけどな。ここ左に曲がったら電気屋さんがあって、その向かいにあられ工場あんねん。」
「あられ工場!?」
「だからまぁ、この辺の人の結婚式の引き出物はあられが主流。」
「そぉなんだ!店いっぱいあるね!」
「元々は村やからね。それぞれの集落で暮らしやすいようになってるんちゃうかな?俺ん所だって昔は荒物屋だったらしいし…。」
「アラモノ?」
「雑貨屋って感じ?食べ物以外ならなんでも。」
「へぇー。今は?」
「やってない。生まれる前の話。でも、おとんが子供の頃の話やから、そぅ昔でもないけどな。」
「そっかぁ。」
「ま、後で連れてったるわ。」
…。
「あれ?もしかして…今日、あたし、泊まり?」
肝心な事忘れてた!
ヒロさんの地元トークで盛り上がってる場合じゃなかった!
チラリと、伺うようにヒロさんを見上げれば、彼も一瞬チラッ目だけでとこっちを見て真顔になった。
あ、不機嫌だ。
「別に帰ってもええけど?1人で帰りや?」
「ぅげげげ!やっば!何も持ってきてないよ?!」
「どーにかなるし。」
「何で、こう、いつも突然かなぁ…。」
「えーやんけ。」
「うー…。」
仕方ないか…腹をくくるしか…。
「…分かった。」
「よし。あ、そや、ジュン子?」
「うん?」
「あられ好き?」
「あられ?うん!」
「そっかそっか。」
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