38人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、なんだ。意外に広いじゃん。」
「そぉかぁ?」
「もっと狭いかと思った!」
「そう?」
短い階段を上がりきったら、さっぱりとした境内に出た。正面に社があって、入り口の左右には立派な狛犬が2匹、阿吽、並んでいた。
「狛犬、苔生えてるよ?」
「知らんがな。中入んで。」
敷居を跨いで中にお邪魔すれば、左右に高い床がある。ちょこっと梯子みたいな階段がついていた。
「何この板間?」
「さぁ?でも秋になれば巫女さんがいてシャンシャンしてもらえんで?」
「シャンシャンって?」
「鈴をこう、頭の上でシャンシャンって。まぁ厄払いやな。」
「巫女さんって、普段何やってるの?」
「普段は普通に小学生やってると思うで?」
「…え?小学生?」
「うん。巫女さんは、この神社の氏子がやる。大体、小6か小5の女の子かな?」
「うじこ?」
「おう。この辺りで生まれた子供はみんなこの神社の氏子や。」
「ヒロさんも?」
「勿論。ほら、上。」
「上?」
「この部屋の周りにぐるっと絵馬あるやん?」
「お~カラフル~。」
「あの絵馬。」
「どれ?」
「あっちの壁の左から2枚目、俺の名前あんの見える?」
「おお!ホントだ!何で!?」
「この絵馬、去年生まれた子供の名前が書かれてあんねん。新しい氏子の名前を、氏神様に報告しとるってわけ。だから、あの絵馬は俺が生まれた次の年のやつやねん。この辺に生まれたからには、みんなここの氏神様の氏子って事になるねん。」
「そぉなんだ!今年のは?」
「新しいのんは正面に飾られるんやけど…」
「…あれ?年号が去年のままだけど?」
「…まぁ、つまり、去年、村で子供が生まれなかったって事やなぁ。」
「あぁ…そうかぁ。」
「年々やっぱり減ってるみたいやなぁ…。まぁ、田舎やからなぁ…。」
「そっか…ちょっと寂しいね。」
「まぁな。しゃーない。…さて、氏神様にお詣りしよか。」
「はぁい。何お願いしよう?」
「七夕ちゃうねん。自分の決意とか目標を誓えや。」
「うぅ…目標かぁ…。」
「とりあえず、今年は部屋を綺麗に保ちますってゆーとけ。」
「…う゛。」
「それか、俺より料理上手くなるよう練習します、やな。」
「いやぁ…レベル高いなぁ。」
最初のコメントを投稿しよう!