プロローグ

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間もなく夜が明けようとしていた。 東の空が明るくなるにつれ、闇に沈んでいた東京のビル群が光の中にゆっくりと浮かび上がってくる。 男は、その情景を慈しむように見つめていた。 元旦の街は車も少なく、空気は澄んでいた。 晴れ上がった空から、音もなく冷気が舞い降り、男を包み込む。 数年前に完成した日本一の高さを誇る新電波塔の頂上が光に包まれ、真剣を鞘から抜き払うように、朝日の反射が舞い降りてくる。 六本木に見える巨大なビル、新宿の高層建築群、あの赤い電波塔。そのすべてが、輝きを放ちながら浮かび上がってくる。 視線を巡らせると、西の方、意外なほどの近さに、朝日を浴びて黄金色に輝く富士の峰がみえる。 そのすべてを目に焼き付けるように眺めながら男は、ああ、と僅かに声を漏らす。
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