プロローグ

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見渡す風景の美しさに曳かれるように、ゆっくりと脚を踏み出した。 そうだ。俺の国は、こんなにも美しかったんだ。 悠久の昔からあの富士に抱かれ、足下には戦後の荒廃のなかから、世界有数の巨大都市を造り上げた。 それでいながら、千年以上も続く世界最古の王朝を維持し、平均寿命は世界一だ。 この国は美しい。 誇るべきもの、守るべきもの、受け継ぐべきもののすべてがある。 だが、いまその国は死にかけている。 誰もがいまの幸せな生活を喪うことを恐れ、日常の維持のみを追い求めた末に、気がつけばなにもかもが手遅れになってしまった。
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