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歩みを止めぬまま、男は思った。
誰かがそうしたわけじゃない。だけど、誰もがその報いを受けなければならない処まで来てしまった。
だからこそ、俺は…俺たちは最後の手段に訴えるんだ。この国に次の百年を、為すべき事を考え、次のより良い手を打つ時間を稼ぐために。
不思議なほど、心は落ち着いていた。
男は、もう一度、自分が考えだし、実行しようとしている計画の事を思った。
やはり、後悔はなかった。
既に、全ては始まり、中止は不可能だった。
それは短期的に巨大な悲劇を産み出す。だが、それによってこの国は不死鳥のように生き返る。
不死鳥は炎でその身を焼き、灰の中から復活すると言うではないか。
「フェニックス」
言葉にだして小さく呟いた。
心が澄みわたるような気がした。
男の歩みが虚空に踏み出し、200メートル下のアスファルトに叩き付けられて意識が暗転するその瞬間まで、男の心は澄みきっていた。
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