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「……ここは…」
うっすらとまぶたを開く。
「やったわ…ついに…!」
二階…だろうか、ガラス越しに見下ろしていた女性が居た。
ガラス越しでも聞こえる、狂ったような歓喜の声を上げた。
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塔子「心拍数、脳波、血圧、その他諸々全て異常無し。人体実験は成功ね」
パソコンの画面に映る細かいアルファベットの羅列、数値、波長の振幅。
塔子は回転イスに腰を下ろすと、机の上のコーヒーを手に取った。
塔子「これで片霧様に褒めて貰える…!」
塔子のしている研究…それは「人口特殊能力者の作製」であった。
片霧 薫(カタギリ カオル)は千葉国の代表者で、現在FEAを退けるべく集まった日本連合でも作戦参謀をしていた。
それだけでなく、日本連合でも指折りの権力を持っていた。
理由は、薫が「特殊能力者」、つまり「ヒーロー」であるからだった。
東京カタストロフィ後、突如現れた少女の姿をした謎の人物の出現情報と同時に、その謎の人物と接触した人が特殊能力に目覚めるという現象があった。
薫もその接触した一人だった。
その特殊能力を戦争に使おうと、人口的に覚醒させる技術を開発していた。
あれから一ヶ月、ついに実験が成功した。
塔子「成功して眼を覚ました被検体は覚ました順に91110、23333、3156K、…イレギュラーナンバー?まぁいいわ。あと22201、S56666。最後の被検体はあの腕がなかった子ね…可哀相に。でも、特殊能力者として目覚めたからには腕の仇も取れるわね」
塔子は資料を読み終えると、またパソコンに向かって、データをまとめ始めた。
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思い出せない。
頭の中がズキズキとまだ痛む。
思い出せたのは、意識を失う間際、最後に聞いたパキパキ、という音。
その音は頭の中で響いていた。
今でも時折、聞こえてくる。
オレはゆっくり首を倒し、右を見た。視界には何百、何千、もしかしたらそれ以上の数、人が白いベッドの上で寝ていた。
勘が正しければ、殆どが死んでいる。
今度は左を見てみる。
同じ光景。
ここは何処だ…?
塔子「こんにちは、91110」
91110「91…1…10…?」
塔子「貴方の番号よ。おめでとう。貴方は勝ち組よ。周りにいる被検体は耐えられなかった力に耐えた」
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